グレープフルーツを食べなさい
 部内でオアシスタウンへ誘致するテナントの選定も終わり、営業社員たちは出店交渉へと乗り出した。

 中には関東、関西まで商談をしに行く社員もいる。ここ数日のオアシス部は、部長と女性事務が数名残っているくらいで、静かなものだった。

「三谷さん、10時から隣のミーティングルームでコンサルとの打ち合わせやるから、お茶出し頼めますか?」

「わかりました。何名分ですか?」

「えーと、こちらも入れて6名かな」

 よろしくね、と館山部長は軽く頭を下げると、自席へ帰っていった。

 豪快で頼りになる父親タイプの野々村部長と比べ、ずいぶん物腰の柔らかい人だ。女子社員たちからも「仕事がしやすい」と人気がある。

 15分前には給湯室へ行き、お茶出しの用意を始めた。

 部長に言われた通り、6人分の湯呑みを出し、急須とともに熱湯で温める。



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