グレープフルーツを食べなさい
「あ、先輩。お茶ですか? お疲れ様です」

 突然後ろから声をかけられて、肩がピクリと跳ねた。

 この声は上村だ。びっくりしたことを知られたら、たぶんまたからかわれる。

 私は、一呼吸おいてから、上村に返事を返した。

「……あれ、上村今日は外出じゃなかったの?」

「10時からの打ち合わせ、俺も同席することになったんです」

 そう言って上村は、淹れたばかりの緑茶に勝手に口をつけてしまう。

「ん、うまい!」

「もうっ、うまいじゃないでしょう。やり直しじゃないの」

「藤和カンパニーとのミーティングで出すつもりだったんでしょう? スムーズな会話はうまいお茶から。チェックしてあげたんですよ」

 上村の調子のいい言葉に、思わず苦虫を噛み潰したような顔になる。


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