グレープフルーツを食べなさい
「失礼します」

 部長が打ち合わせのスタートを告げるのを待って、静かに小会議室に入る。入ってすぐに、コンサル側のテーブルの右端に座る、綺麗な顔立ちの女性に目が行った。

 打ち合わせに同席しているということは、彼女も営業職なんだろう。女性では珍しい。熱心に手元の資料一枚一枚に目を通している。

 私は打ち合わせの邪魔にならないよう黙礼だけして、それぞれのスペースにお茶を置いていった。

 誰もが、私なんて目に入らないかのように打ち合わせに集中しているのに、彼女だけが小さく「ありがとうございます」と笑顔で言ってくれた。私もそれに笑顔で返す。

 彼女が微笑むと、大輪の花が咲いたように空気が明るくなった。女性の私から見ても、とても素敵な人だと思った。


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