グレープフルーツを食べなさい
自覚と嘘
「三谷さん今頃悪いんだけど、ここの数字だけちょっと直してもらえる?」

 定時30分前。岩井田さんから渡されたのは、商談を明日に控えたドラッグストアとの契約書だった。

「岩井田さん、すみません。何か間違いがありました?」

「ううん、違うんだ。上からの指示。今頃になって本当にすまないね」

「いえ、大丈夫です」

 とりあえず私のミスではなかったことにホッとする。

 私は岩井田さんから書類を受け取ると、すでに山積みになっている書類の上に置いた。

 今取り掛かっているデータの入力が終わったら、今日はもう帰るつもりでいた。17時半のバスに乗れば、母の夕食の時間に間に合う。

 でも今日はもう、諦めるしかなさそうだ。


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