グレープフルーツを食べなさい
 上村の言葉に一瞬、胸が音を立てた。

 なに意識にしてるのよ、私。馬鹿らしい。上村は、どうせいつもみたいに私をからかって遊んでいるだけだ。

「……はは、相変らず口がうまいな。仕方ないわね」

 少し反応が遅れてしまったけれど、なんとか上村の言葉を流して、私は近くにある戸棚に手を伸ばした。

 そこからガラスのコップを取り出すと、冷凍庫から取り出した氷でコップを一杯にした。その中に淹れたてのお茶を注ぐ。熱いお茶で解けた氷が、コップの中でカランと涼しげな音を立てた。

「あー、それうまそう」

「はい、どうぞ。軽くコップを揺すってから飲んでね」


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