グレープフルーツを食べなさい
◇◇◇

 じりじりと頬を刺す熱い日差しで目が覚めた。カーテンの隙間から、真っ青な夏空が覗く。

 時計の針は午前10時を指していた。下着すら纏っていない剥き出しの肌と気怠い身体が、昨夜の出来事は夢ではないのだということを私に思い知らせる。

 でも、私の隣に上村はもういない。

「いるわけないか……」

 上村は、私が眠っている間に部屋を出たようだった。

 つまりは、そういうことだ。私は彼に同情された。

 その証拠に、上村は私に何も残さなかった。その場限りの甘い言葉も、言い訳も、何一つない。

 わかっていたことなのに、現実がチクリと胸を刺す。どこかで期待していた自分に、苦い笑みが零れる。

 それにもう、涙は全部出尽くしたみたいだ。

 ベッドの下に落ちていたTシャツを素肌の上に身に着けると、私は勢い良く寝室のカーテンを開けた。真夏の強い日差しが肌を焼く。


 シャワーを浴びて、全てを洗い流そう。そして私は生まれ変わる。

 誰にも頼らず生きていくために。



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