グレープフルーツを食べなさい
すれ違う心
あんなことがあった後も、上村は相変らずだった。
これまで通り、時々ふらりとやって来てはご飯を食べて帰っていく。手土産にグレープフルーツを持ってくるのも変わらない。
あの日私は、上村への想いを自覚した。
何を考えているのかわからない、でも人の痛みに敏感で、優しい。
上村がそうなのは、たぶんひどく傷ついたことがあるからだ。私には決して話してくれないけれど。
そして私は、そんな上村のことをどうしても放っておけずにいる。
「三谷さんごめん、朝頼んだ資料できてる?」
「旭書店の分ですね。はい、できてます」
「よかった! じゃあ、行って来ます」
「がんばってくださいね、岩井田さん」
慌しく外出する岩井田さんを笑顔で見送った。
仕事は忙しさを増していた。オアシスタウンの開業が正式に再来年の春に決まり、部内はますます活気づいている。
これまで通り、時々ふらりとやって来てはご飯を食べて帰っていく。手土産にグレープフルーツを持ってくるのも変わらない。
あの日私は、上村への想いを自覚した。
何を考えているのかわからない、でも人の痛みに敏感で、優しい。
上村がそうなのは、たぶんひどく傷ついたことがあるからだ。私には決して話してくれないけれど。
そして私は、そんな上村のことをどうしても放っておけずにいる。
「三谷さんごめん、朝頼んだ資料できてる?」
「旭書店の分ですね。はい、できてます」
「よかった! じゃあ、行って来ます」
「がんばってくださいね、岩井田さん」
慌しく外出する岩井田さんを笑顔で見送った。
仕事は忙しさを増していた。オアシスタウンの開業が正式に再来年の春に決まり、部内はますます活気づいている。