グレープフルーツを食べなさい
岩井田さんがオフィスを出たのを確認して自席に戻ると、デスクの外線が鳴り響いた。私は一度呼吸を整えて、目の前の受話器を取った。
「はい、オアシスタウン事業部三谷でございます」
「あの……私、土井 祥子と申します。上村 達哉に取り次いでいただきたいんですけど……」
若い女性の声だった。会社名を名乗らないことを不思議に思った。
「申し訳ございません、ただいま上村は外出しておりまして。折り返し上村から連絡させましょうか?」
「そうですか……、それならば結構です。失礼しました」
「あっ」
連絡先を聞く前に、電話は切られてしまった。仕方がないので、とりあえず名前だけを書いた付箋を上村のデスクに張り付けておく。
「三谷さん」
顔を上げると、入り口のドアの外にさっき出て行ったはずの岩井田さんが立っていた。
「あれ岩井田さん、何か忘れ物ですか?」
「そうじゃなくて……。いや、忘れ物って言ったらそうかな」
ここまで走って戻ってきたのだろうか。少しだけ息が上がっている。
「はい、オアシスタウン事業部三谷でございます」
「あの……私、土井 祥子と申します。上村 達哉に取り次いでいただきたいんですけど……」
若い女性の声だった。会社名を名乗らないことを不思議に思った。
「申し訳ございません、ただいま上村は外出しておりまして。折り返し上村から連絡させましょうか?」
「そうですか……、それならば結構です。失礼しました」
「あっ」
連絡先を聞く前に、電話は切られてしまった。仕方がないので、とりあえず名前だけを書いた付箋を上村のデスクに張り付けておく。
「三谷さん」
顔を上げると、入り口のドアの外にさっき出て行ったはずの岩井田さんが立っていた。
「あれ岩井田さん、何か忘れ物ですか?」
「そうじゃなくて……。いや、忘れ物って言ったらそうかな」
ここまで走って戻ってきたのだろうか。少しだけ息が上がっている。