グレープフルーツを食べなさい
呼吸を整えると、岩井田さんは黒いセルフレームの眼鏡のブリッジを持ち上げた。……ああこれは、ちょっとやっかいな頼み事をする時の岩井田さんの癖だ。
「仕事ですか?」
私の問いに岩井田さんは周囲をさっと窺うと、体をかがめて私の耳元に顔を寄せた。
「その……三谷さん、この後時間ありませんか」
「それは……就業時間内ですか?それとも……」
「就業時間外、です」
私はデスクの上のカレンダーにさっと目を走らせた。今日は金曜日。ひょっとしたら上村が部屋に来るかもしれない。でも、私たちに確かな約束があるわけじゃない。
「わかりました。少し遅い時間なら……20時以降なら大丈夫です」
「良かった。また後で連絡入れますね」
一体何なんだろう、仕事の相談事だろうか。今のところ岩井田さんの抱える仕事はスムーズに進んでいるはずだし、これといって思い当たることもない。
再び「行って来ます」と手を振る岩井田さんを見送って、私は視線をパソコンの画面に戻した。
「仕事ですか?」
私の問いに岩井田さんは周囲をさっと窺うと、体をかがめて私の耳元に顔を寄せた。
「その……三谷さん、この後時間ありませんか」
「それは……就業時間内ですか?それとも……」
「就業時間外、です」
私はデスクの上のカレンダーにさっと目を走らせた。今日は金曜日。ひょっとしたら上村が部屋に来るかもしれない。でも、私たちに確かな約束があるわけじゃない。
「わかりました。少し遅い時間なら……20時以降なら大丈夫です」
「良かった。また後で連絡入れますね」
一体何なんだろう、仕事の相談事だろうか。今のところ岩井田さんの抱える仕事はスムーズに進んでいるはずだし、これといって思い当たることもない。
再び「行って来ます」と手を振る岩井田さんを見送って、私は視線をパソコンの画面に戻した。