グレープフルーツを食べなさい
「わかったから、菜箸振り回すなって。でもどうすんですか、こんなにたくさんのグレープフルーツ」

「全部食べるわよ。食べるに決まってるでしょう?」

 冷蔵庫に入りきらなくて、スーパーの袋に入れたまま床に置いたたくさんのグレープフルーツを指差して、上村がまた小ばかにしたように笑う。

 結局私は、傷物になったグレープフルーツを全て買い取った。今日からしばらくは毎食グレープフルーツだ。大丈夫よ、こんなに美味しいんだもの。これくらい、別にどうってことない。

「俺がまた食べに来てあげますよ。なんなら毎日来てあげようか?」

「結構です」

 いつまでたってもクスクス笑いを止めない上村を、私は半ば本気で睨みつけた。


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