グレープフルーツを食べなさい
「違うよ。それは誤解だってちゃんと説明した」

「じゃあ、何? 二人して一体俺に何がしたいわけ?」

「……上村、お母さんが亡くなってることどうして私に言ってくれなかったの?」

「そんなの、別に自分から言いふらすようなことでもないだろ」

「それはっ、そうだけど……。気を遣ってくれたんじゃないの? 私の母が病気を抱えているから……」

 それは、一縷の望みだった。私に黙っていたのは上村なりの優しさだと、そう信じたかった。だけど、返ってきた上村の声も視線も全て、今まで感じたことがないほどに冷たいものだった。

「別に。俺そんなにいい奴じゃないよ。先輩は知ってると思ってたけど」

「そんな、上村本当は優しいじゃない。どうして隠そうとするの?」

「……あんたホントにおめでたいな。何? 寝たら俺に情でも湧いた?」

 上村の、私を蔑むような視線に背筋が粟立つ。どうしたら? どう言えば私は上村の心を開くことができるの?


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