グレープフルーツを食べなさい
「……そんなんじゃないよ。でも上村も苦しんでるんじゃないの? 私、見てられないんだよ。祥子さんだってそう。祥子さん上村のこと本当に心配してるよ。家族と……直人くんとちゃんと仲直りして欲しいって。このままでいいはずないって」

「祥子さん、そんなことまであんたに話してんのか。……ったく、何考えてんだよ」

「なんとか二人に仲直りして欲しいんだよ。一度くらい話してみたら――」

「悪いけど」

 上村の低く搾り出すような声に息を飲んだ。表情は変わらないのに、上村の静かな怒りの感情が矢のように突き刺さってくる。

「あ……」

 ああ、まただ。またあの夜と同じ。上村は振り返ることもなくこの部屋を去って行く。


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