グレープフルーツを食べなさい
「三谷さん、岩井田さんにファックス届いてますけど」

「預かります。ありがとう」

 後輩が持って来てくれたファックスを受け取り、岩井田さんのデスクに置く。

 岩井田さんは、朝からコンサルタントとのミーティングに入っている。

 何かトラブルでも起きたのか、部長をはじめ営業社員たちもずっと会議室に詰めたままで、予定の時間を過ぎてもミーティングは一向に終わる気配がない。

「だいぶ長引いてるみたいですね」

「そうね。もうすぐ終わるとは思うんだけど」

「参ったな、私書類のチェック待ちなんだけどなー」

 彼女の上司は大手のスポーツ用品店を担当している。もちろんその上司も、朝から会議室に籠りきりだ。

「こんなに揉めるような案件ありましたっけ?」

「んー、どうだったかな」

 後輩と二人で首を傾げていると、内線の呼び出し音がなった。後輩に断り、受話器を取る。

「はい、オアシス部三谷です」

『三谷さん、僕です』

 電話は岩井田さんからだった。


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