グレープフルーツを食べなさい
『僕のデスクの上に青いファイルが出してあると思うんだけど……』
「ああ、あります」
『悪いんだけど、第二会議室まで持ってきてくれないかな。あと、よかったらお茶も。その、みんな気分転換が必要みたいだ』
電話越しに声を聞くだけで、岩井田さんが苦笑いしているのがわかる。話が行き詰って、みんなイライラしているんだろう。岩井田さんらしい気遣いだなと思う。
「わかりました。すぐにお持ちします」
『助かるよ、それじゃ』
「ごめんなさい、ちょっと第二会議室行って来ます」
私は受話器を置くと、近くの席の女子社員に声をかけ、席を立った。
今日のミーティングには、麻倉さんも参加している。もちろん、上村も。朝から部内で親しげに言葉を交わす二人のことを、私も見ていた。その様子を見て、こそこそ耳打ちをする女子社員たちもいたから、社内でも二人のことが広まっているのかもしれない。
「……仕事だ、しっかりしろ香奈」
小声でそう呟いて、自分に喝を入れる。一度、大きく深呼吸をして、第二会議室のドアの前に立った。
「ああ、あります」
『悪いんだけど、第二会議室まで持ってきてくれないかな。あと、よかったらお茶も。その、みんな気分転換が必要みたいだ』
電話越しに声を聞くだけで、岩井田さんが苦笑いしているのがわかる。話が行き詰って、みんなイライラしているんだろう。岩井田さんらしい気遣いだなと思う。
「わかりました。すぐにお持ちします」
『助かるよ、それじゃ』
「ごめんなさい、ちょっと第二会議室行って来ます」
私は受話器を置くと、近くの席の女子社員に声をかけ、席を立った。
今日のミーティングには、麻倉さんも参加している。もちろん、上村も。朝から部内で親しげに言葉を交わす二人のことを、私も見ていた。その様子を見て、こそこそ耳打ちをする女子社員たちもいたから、社内でも二人のことが広まっているのかもしれない。
「……仕事だ、しっかりしろ香奈」
小声でそう呟いて、自分に喝を入れる。一度、大きく深呼吸をして、第二会議室のドアの前に立った。