グレープフルーツを食べなさい
「先輩おかわりは?」

「あ、ありがとう」

 最後の一口を飲み干し、私は、グラスを上村に手渡した。

 上村は仕事中もそうでない時も、周りを良く見ているし、とても気が利く。

 そういえば、新入社員の時からそうだった。

「お待たせしました」

 バーテンダーが音もなく新しいグラスをカウンターに置いた。私は、今日二杯目のジントニックに手を伸ばす。

「先輩、……そろそろ白状したらどうです?」

「……何を」

 グラスを片手に私を流し見る上村に、一瞬胸が音を立てた。


「俺の異動の後、鳴沢さんとはどうなったんですか?」


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