グレープフルーツを食べなさい
 そう言うと、上村は子供にするみたいに私の頭をぽんぽんと撫でた。

 ……一応私、年上のはずなんですが。そんなことをされるのは初めてで、なんだか照れてしまう。

「それにさ、俺が買ってくるんじゃなくて、一緒に買いに行けばいいでしょ。これからはずっと一緒にいるんだから」

「あ、そっか」

 私がそう言うと、上村はまた「ふはっ」と変な声を出して笑った。

「わかった? じゃあ、続き」

 あっという間に上村が後ろから身体を包み込んで、私は逃げ切れなくなった。本当は照れくさくてキスを逸らしたの、ばれてたのかな?

 上村の『これから』には、もう私がいる。

私は、今度こそ逃げ出さずに、愛しい人の唇を受け止めた。


 -fin-




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