グレープフルーツを食べなさい
「何よあれ……むかつく!」

 廊下から聞こえてきた捨て台詞に思わずため息が漏れた。

 こんなこと、もう慣れっこだ。

 慣れてしまえば、自分に向けられた酷い言葉もため息と共に流すこともできる。

 私だって好きで若い子たちに小言ばかり言ってるわけじゃない。少しでも早く一人立ちして欲しいから、ついつい指導は厳しいものになる。

 たとえそれで後輩たちに煙たがられたって、私は私の役割を全うしているんだから、別に構わない。

 この春で入社六年目。
今まで自分なりにプライドを持って仕事に取り組んできた。

 少なくとも今の私は、一人で立っていられてると思う。

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