グレープフルーツを食べなさい
 上村とこうやってまともに話をするのは、ほぼ三年ぶり。

 いいやつだとは思うけど、本当に彼のことを信用しても大丈夫だろうか?

「口外はしません、約束します」

 上村は酔いを少しも感じさせない強い瞳で私を見た。

「……わかったわ。私の負けよ」

 私は潔く負けを認め、自分のスツールに腰を下ろした。

 飲み慣れない強い酒のせいでまだ顔が熱い。

 酔いが回り始めたのか、頭がくらくらする。堪えきれなくて思わず目を閉じると、上村がバーテンダーに何かをオーダーする声が聞こえた。

「お待たせしました」

 バーテンダーはしなやかな動きで、背の高い華奢なグラスを私の目の前に置いた。


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