グレープフルーツを食べなさい
 驚いたことに、彼は私が淹れるお茶が社内で一番美味しいと委員会のたびに褒めてくれた。

 そんなことを言ってくれたのは、今まで外食部の野々村部長くらいだったから、私は、彼の言葉が素直に嬉しかった。


 ――告白は、彼からだった。

 社内でも目立っていた彼に近寄ってくるのは下心見え見えの女の子たちばかりで、それまで私のようにじっくり仕事のことなんかを話せる女友達なんていなかったらしい。

 一緒にいる時間が増えるにつれ、彼はぽろりぽろりと私に本音を零すようになったし、私は私で、他の誰でもなく真っ先に彼に仕事の悩みを相談するくらい、彼のことを信頼するようになっていた。

 そうして、いつの間にか信頼は恋心に形を変えていて。

 ……だから私は、喜んで彼の告白を受け入れた。


< 48 / 368 >

この作品をシェア

pagetop