グレープフルーツを食べなさい
 付き合いは、うまくいっていたと思う。

 会社では張り詰めた顔をしている彼も、私といる時は心から寛いでいるように見えた。

 結婚のことだって、先に口にしたのは彼だ。

 彼となら、穏やかで温かい家庭を築いていけるかもしれない。漠然とだけど、私も二人の未来を想像するようになっていた。


 でも……。

 そろそろ互いの親に挨拶に行こうか、そう話していた矢先、彼の様子がおかしいことに気がついた。

 仕事で疲れている時とはまた違って、ふとした時にひどく沈んだ表情をしている。


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