グレープフルーツを食べなさい
本性
また今日も残業になった。
年度初めからの二週間の大半を新入社員指導に費やしたつけがまわり、四月の後半は毎年目の回るような忙しさになる。
この時間はもう、社屋の裏側にある通用口しか開いていないはず。
せめて終バスを逃すまいと、私はエレベーターを降りると早足で通用口目指した。
会社の裏手から出て、社屋の正面側に出ようと数メートル歩いたところで、誰かが言い争うような声が聞こえた。
立ち止まり辺りを見回すと、従業員用の駐車場にぼんやりと二つシルエットが浮かんで見えた。
妙な胸騒ぎがして、私は彼らに気づかれないように足音を忍ばせそっと近付いた。
「どうして別れなきゃいけないの? 私には距離なんて苦じゃない!!」
「そんなこと一言も言ってねえだろ。……迷惑なんだよ」
年度初めからの二週間の大半を新入社員指導に費やしたつけがまわり、四月の後半は毎年目の回るような忙しさになる。
この時間はもう、社屋の裏側にある通用口しか開いていないはず。
せめて終バスを逃すまいと、私はエレベーターを降りると早足で通用口目指した。
会社の裏手から出て、社屋の正面側に出ようと数メートル歩いたところで、誰かが言い争うような声が聞こえた。
立ち止まり辺りを見回すと、従業員用の駐車場にぼんやりと二つシルエットが浮かんで見えた。
妙な胸騒ぎがして、私は彼らに気づかれないように足音を忍ばせそっと近付いた。
「どうして別れなきゃいけないの? 私には距離なんて苦じゃない!!」
「そんなこと一言も言ってねえだろ。……迷惑なんだよ」