グレープフルーツを食べなさい
「それは違う! たまたまよ。会社を出たら、駐車場から人の声がしたから――」

「あー、はいはい。言い訳はいいから」

「だから、言い訳なんかじゃ……」

 上村はふっ、と口元を歪めて笑うと、冷たい瞳で私を見下ろした。

 これ……本当に上村?

 私が知っている上村と、この別人のような上村とのギャップをどうしても埋められない。

「ところで先輩、もう帰るの?」

 呆然としていた私は、上村の声でようやく我に返った。

「そうだけど……」

「じゃあ飲みに行くよ。はい、決まり」

 勝手に決めると、上村はまた無理やり私の手を取って歩き出した。

「ちょっ、上村! 何でよ? 私残業続きで疲れてるん……」

「聞こえない」

 上村の有無を言わさない一言に気圧され、私は黙って彼の後に続いた。


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