グレープフルーツを食べなさい
「上村、よくこんなお店知ってるわね」

 この辺りは繁華街からは少し離れていて、私も来たことのないエリアだ。

 お店自体も店員のサービスに気取ったところはなくリラックスできるのに、店内のセンスのいいインテリアや、高価な花を使ったアレンジが特別な気分にさせてくれる。素直にいい店だと思った。

 ……ただし、これが恋人とのデートであれば。

 まずいところを見られた私をこんな店に連れてくるなんて、何か裏があるはずだわ。

 上村が考えてることを見極めないと。やっかいなことに巻き込まれたくはない。

「まあ、こういう店も知ってなきゃ、隠れてうまく遊ぶなんてできませんからね」

 それはやっぱり女性関係のことなのだろうか。

 会社の駐車場で崩れ落ちた先ほどの女性の姿が頭に浮かんだ。


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