グレープフルーツを食べなさい
 椅子に腰掛けようとした私は、何かに足を取られふらついた。上村が咄嗟に支えてくれたおかげで、私はその場で転倒せずにすんだ。

「大丈夫ですか、先輩」

「ごめん……、大丈夫。今週忙しすぎて疲れてたから酔いがまわっちゃったかも。……あ、ごめん!」

 上村の腕を掴んだままだったことに気付いて、慌てて手を離した。


 どうしよう、私。自分で思っている以上に酔っているのかもしれない。

「そろそろ出ましょうか?」

 上村はそのまま私の腰に手を添え、私を店の外へと連れ出した。

「上村、お代は?」

 私がお手洗いに行っている間に、会計も済ませていたらしい。

「今日は本当にいいです。この間は割り勘だったし」

「あ、ありがとう。でも……」

「いいから。そんなことより、先輩どこに住んでるんでしたっけ? 俺、送りますよ」

「ああ、大丈夫よ。荒田だから結構近いし、タクシー拾って帰るから」






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