グレープフルーツを食べなさい
 ……やってしまった。

 情けないことに、私は上村の肩を借りて寝入ってしまったらしい。何とか一人でも立てるけど、まだ頭がぐらぐらする。

「部屋は何階ですか?」

「ううん、もう大丈夫だか……きゃっ!?」

 一人で立とうと上村から体を離した途端、また頭がぐらりとして私はその場に座り込んだ。

 目が回ってなかなかか立ち上がれない。

 ……ワインの酔いってこんなにひどいんだ。

「頼むからこれ以上世話焼かせんなよ。部屋は何号室?」

 上村は、もう苛立ちを隠さなかった。

 酔った私を持て余したのか、いつの間にか素に戻ってる。

「えっと……306号室……」

 断わるのも面倒で、今度は私も素直に部屋番号を告げた。


< 72 / 368 >

この作品をシェア

pagetop