グレープフルーツを食べなさい
「先輩でもそんなドジすることあるんですね、珍しい」

 振り向くと、給湯室の入り口ににやけた顔の上村が立っていた。

「上村、邪魔しないでくれる?」

 シンク上の戸棚から茶筒を取り出し、乱暴に戸を閉める。嫌悪感を態度で示しても、上村は立ち去ろうとはしない。

「あーあ、物にあたっちゃダメですよ。何をそんなにイラついてんですか」

「あんたのせいでしょう? 部屋の鍵、早く返しなさいよ」

 面白そうにクスクス笑う上村を下から思いきり睨みつけた。

 私が凄んだところで、怖くもなんともないんだろう。上村はにやけた顔のままだ。

「あんまりカッカしてると眉間のしわが取れなくなりますよ。たまには俺がお茶淹れてあげますから、ちょっとどいて」

「いいわよ、そんなこと」

 上村は無言で私を押しのけると、茶筒を手に取った。

 仕方なく私は、上村の真横で観察することにした。


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