グレープフルーツを食べなさい
「美奈子って、相良美奈子? あいつ会社でも仕事してなさそうだけど、ホントひどいよね。他の女たちも気の利かないバカばっかだし。飲み会の間中べったりくっつかれて、飯食うどころじゃなかった」

「なによ、それ。じゃあどうしてあの子たちと飲みに行ったの?」

 上村は唯でさえもてるんだから、そんなとこに行ったら女の子たちに囲まれるに決まってる。それがわからない上村じゃないだろうに。

「俺がいないと女の子たち集まんないでしょ。そんなの営業の連中の為に決まってるじゃん。少しでもあいつらに恩売っておかなきゃね」

「……呆れた。ホント上村っていい性格してる」

「お褒めに預かり光栄ですよ。そんなことより先輩、早く何か食わせて。頼むから」

「嫌よ。どうして私が」

「そう、この鍵返さなくていいんだ」

 そう言うと、上村はあの日のように私の眼前に鍵をぶら下げる。

 奪い返そうと手を伸ばすと簡単にかわされた。

「返して欲しいんじゃないの?」

「……わかったわよ」

 仕方なく私は、冷蔵庫を開けて食事の用意を始めた。


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