グレープフルーツを食べなさい
 上村に避けられたせいでバランスを崩した私は、廊下の壁に手をついて、なんとかふらついた体を支えた。

「ちょっと、危ないじゃない!!」

「ああ、スミマセン」

「スミマセンじゃないわよ、だから鍵!

 なんとかして鍵を取り返そうと、上村に向かって手を伸ばしたけれど。

「先輩の飯、また食べに来ますから。それじゃ」

 私の腕は空を切り、目の前でバタンと大きな音を立ててドアが閉まった。

「……まったく、一体何しに来たのよ!」

 私は悪態をつきながら、ドアの内鍵を回した。

 いつもはそのままのチェーンも、今日はしっかりとドアに掛けておいた。


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