ﾇｴ

泣き疲れ、朝がきた。何もしたくなかったが、いつもの様に弁当を作り、自転車に乗って仕事に向かった。
いつもの道、あのかど、あの家で、葬式をしている、田中ﾐﾂ子、あの妖怪がﾐﾂ子と言っていたような、誰かに背中を押された、焼香の列にならんだ、あのおばあさんの写真・・こんなに近くだったなんて、ぼーぜんとし、天を仰いだ。渇れはてたはずの涙が溢れた。