ヌエ
絢香の頬に当たった玉の後が、あざみのように見えた。たけしはその頬に唇を当てた「お兄ちゃん、なおちゃった」て言ってくれる気がして、 「お前が落としたんだせ俺のせいじゃない」階段の上でどなる義父 絢香は死んだ。 たけしは、また施設に帰った、しかし、今度は、一人で ただ10年生きている、誰にも心を開けず、あざみの花のように、触れようとする手にトゲをさし、治る事のない傷を、誰にも見せまいと、生きている。 15