エトワール
エトワール
大学からの帰り道、それはいつもの帰宅コースとは違う、ちょっとだけ遠回りの寄り道コース。
人の多い駅前を通り過ぎて更に歩き続けると、やがて立ち並ぶ店も行き交う人もまばらになってきた頃に現れるのが、煉瓦造りの小さなお店。
そのお店の張り出した屋根を見る度に、彼女の頬は緩む。
木製の扉に手をかけると、カランカランと小気味いい音が耳に届いた。
「おー、いらっしゃい」
いつもと変わらない気の抜けた挨拶に迎えられて店内に足を踏み入れると、ふわっと香ばしい香りに包まれた。
ここは、彼女が雨の日に偶然見つけたパン屋。
彼女が見つけたのか、それとも店主が彼女を見つけたのかは微妙なところだが、とにもかくにも、お店の名前はエトワール。
「それにしても、あんたは今やうちの店の一番のお得意様なわけだけど、花の女子大生は他にすることがないわけ?」
そう言ってちょっぴり呆れたように笑うのは、この店で接客を担当している前田 菜穂。
彼女が来店するまで店内にお客がいなかったのをいいことに、レジカウンターの向こうで椅子に座り込み、組んだ脚の上に堂々と雑誌を広げている。
人の多い駅前を通り過ぎて更に歩き続けると、やがて立ち並ぶ店も行き交う人もまばらになってきた頃に現れるのが、煉瓦造りの小さなお店。
そのお店の張り出した屋根を見る度に、彼女の頬は緩む。
木製の扉に手をかけると、カランカランと小気味いい音が耳に届いた。
「おー、いらっしゃい」
いつもと変わらない気の抜けた挨拶に迎えられて店内に足を踏み入れると、ふわっと香ばしい香りに包まれた。
ここは、彼女が雨の日に偶然見つけたパン屋。
彼女が見つけたのか、それとも店主が彼女を見つけたのかは微妙なところだが、とにもかくにも、お店の名前はエトワール。
「それにしても、あんたは今やうちの店の一番のお得意様なわけだけど、花の女子大生は他にすることがないわけ?」
そう言ってちょっぴり呆れたように笑うのは、この店で接客を担当している前田 菜穂。
彼女が来店するまで店内にお客がいなかったのをいいことに、レジカウンターの向こうで椅子に座り込み、組んだ脚の上に堂々と雑誌を広げている。