涙と ホームランと ありがとう
今日の試合を見に来ていたエース竜也の父秀治の顔を見て鬼監督は申し訳なさそうに「ホントにあいつらは同じミスばっかりするんですよね、勝てるはずなのに…自分の事しか考えてないんですよねぇ、チームってもんがまだよくわかってないのかなぁ…」まるで自分に問い掛けるような口ぶりであった。親と話す時は鬼監督の片鱗すら見せない浜田だ。
「見てるとわかりますよね、僕はサッカー小僧だったから野球はあまり得意じゃありませんがそれぞれが何をしなきゃいけないか解ってないのが要所に見られますね」余り知ったかぶる言い方はしない様に気を使いながら話す秀治。「お父さんも一緒にどうですか?野球?」鬼監督がとんでもない事を言い出した。
「僕がですか?無理無理!」その後も薦められたが丁重に断った。止めてある車まで行く間に何人の親御さんに声を掛けられただろう「今日の竜也調子良かったですね」「ピッチャーが良いのに打てなきゃね~」その度に「はぁ~」「へぇ~」と返事しか出来ない秀治である。美容師という接客業でありながら仕事以外では他所の親御さんは苦手なのであった。ようやく車にたどり着きエンジンをかけながら「今日は竜也と銭湯でも行ってくるか…」ボソッと呟いた。
家に着きガレージに車を入れ玄関に来た頃
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