Secret Garden-秘密の庭園
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『…───むかしむかし、あるところに一人の庭師がいました。それは庭師にしては珍しい女性の庭師でした。彼女は毎日一生懸命働きました。他の庭師の嫌がらせにめげず、理不尽な依頼主にも立ち向かい、彼女はとても真摯に草花と向き合いました。

 するとある日、庭師がせいをだして働いているとそこに一人の青年が通りました。青年はここ一帯の地主の息子でした。

 地主の息子は彼女の一生懸命に働く姿とその美しい庭に感動し庭師の庭によく訪れるようになりました。
 そして、そのうち地主の息子は庭師と恋に落ち、地主の息子は庭師を大切にしました。庭師は地主の息子と仲良く暮らしましたとさ』

 とかさ、どうして親ってちっちゃい子にそういうこと言うのかな。

『リディアの所にもかっこいい地主の息子のような王子様が来てくれるわ。庭師をしてればきっと王子様に見初められて幸せに暮らせるのよ』

 とか、何を根拠にどんな王子が来るんだっつーの。

 第一さ、王子ってなに、国の皇太子様が来てくれんの。なわけないよね。まあ、皇太子が無理にしろ地主の息子とか、そんな貴族のぼんぼんみたいのが簡単に釣れるんだったら女の子たちみんな庭師やってるよ。

 でもまあ百歩譲って、もし王子様が来てくれたとして、庭師の仕事をやってる姿見て惚れる?だって動きやすいつなぎ着て髪は一本にまとめて、そんな男か女かもわかんない状態のやつに恋する?しないよね。するわけないですよね。

 わかってるよ。わかってる。体が弱くて世間知らずで本とばかりお友達してた私は母様と父様の巧みな話術にまんまと家業を継ぐようにと騙されましたよ。

 正直小さい頃はイケメンがつれるなんて何て素敵な職業だともチラッと…いや、かなりおもってました。

 でも年を重ねるにつれて、そんな王子様ドリームありえないってわかって、
 でもそれなりに、この職業に就いて庭作りを本当に心からやってみたい、自分で庭を作りたいって気持ちも膨れ上がって庭師に就いたわけです。

 だからね正直もうどうでもよかったの。

 王子様とかイケメンとか、私はとりあえず愛しい草花たちと触れあえさえすれば、そんなものどうでもいいわと言いきれる程にはどうでもよかった。本当に、どうでもよかったの。

「リディア、今日はこの紙に書いた薬草が欲しい」

 そう言い彼は、第一宮廷魔導騎士団の印である赤のラインが入ったローブを気だるそうに脱ぎながら私の所有する庭に踏み込んだ。

 小さく結わえた漆黒の髪風に靡き、遠目からでもはっきりわかる程の広い肩幅と締まった腰。おまえどうみても騎士様だろ、と突っ込みたくなるくらいの無駄と隙のない動きかた。

 そして精巧な彫刻のように整った中性的よりは少し男らしさによった色っぽい顔だち。

 何をとっても極上の男でしかない彼は私の側に来ると輝かしい王子スマイルで私の思考を悩殺しながら、はい、と薬草の名が書かれたメモ用紙を手渡した。


 ────誰だよ、今さらこんな面倒くさそうなリアル王子を私の元に仕向けたやつは。

 私はメモ用紙を受けとると青年に声に返事を返すことなく無言でただただ土をほじくり返していた。



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