紅い果実《BL》
「だったらせめて、早く終わらせて返すのが僕にできる精一杯だ。」
僕はもう一度、魂の記憶を思い出していた。
白い壁、窓、なびくカーテン…
悲しみ、絶望、死、生…
これらが指し示す場所。
「病院、か」
きっとこの人は女性で、病死したんだろう。
浮かんだ景色の中にいた男はまだ若く、その人を“彼”と呼んでいたことから、この魂も若くして死んだということになる。
…未練、たくさん残したんだろうな。
「病院…そこに行けば、何かわかるかも。」
でも、どこの病院だ?
それがわからなきゃ行けな…
待てよ、確か点滴パックの表面に…
そうか…!場所は、
『円城寺病院』だ。
窓からは、川と緑の橋の上をわたる電車が見えていた。
川、川…
チッ、上から見ないとわからないか。
仕方ない。
僕はまた、宙へと移動した。
クロエに会うのは気まずいと思っていたけど、クロエはもうそこにはいなかった。