小さく笑ったあなたの目には
ある日、あいつが言ったんだ。

「俺、彼女ができたんだ。」

嬉しそうに。

写真を見せ、

「3つ隣のクラスの子なんだ。」

周りにいた友人も一緒にじっくりと見た。

長い黒髪の可愛らしい女の子だった。

彼女も嬉しそうに笑っていた。


僕は内心、とても嬉しかった。

やっと彼女を僕の方へ向かせることができるかもしれない。

でも、そんな希望は無惨にも崩れ去った。


あの日から彼女は変わってしまった。

笑顔が消え、まるで心がないかのように表情が固まってしまった。

笑うときもぎこちない。

いつも悲しそうにあいつの後ろ姿を見つめていた。

結局そうか。

あの子はそんなことで諦めてしまうような気持ちではなかったんだ。

彼女にとって僕はたった一人の友人にしかすぎなかったんだ。

最低だ。

思えば僕はなにもしてないじゃないか。

そうだ。

なにもだ。

自分が、

相談にのることも、

楽しい話をしてあげることも、

励ますことも、

"好きだ"と言うことも。


僕はテレパシーなんか使えないし、

彼女をこちらに向かせるようなまじないなんかも知らない。

でも、そんな僕にだって伝えることはできるじゃないか。

方法なんていくらでもあるじゃないか。

こんなふうにうじうじしてるほうがよっぽどカッコ悪い。

そうだ。

彼女に笑顔を向けて、一言言えばいいだけの話ではないか。
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