小さく笑ったあなたの目には
彼は静かに振り向き、
「知ってるよ。」
そう笑顔で言って、静かに教室を出ていった。
自然と悲しくはなかった。
でも、
「涙が、出る。なん、で。」
私は彼が好きだった。
でも、私はなにもしなかった。
やっぱり悲しいのだ。
フラれたことが。
なんて自分勝手なのだろう。
なにもせず、勇気を出さず、相手任せにした私に、そんな奇跡は起こるはずがないのだ。
そうだった。
私はなにもしなかった。
前に進んでいるつもりになって、一歩も踏み出さず、その場に座り込んでいた。
相手がこちらに歩いてくるのを待っていたんだ。
自分に甘いよ。
言い訳だ。
思えば自分は友人に言っていた。
彼に告白した女の子が泣いている様子を見たときだ。
「かわいそうに。」
自分はどこかで勇気を出すことを恥ずかしいと思っていたのかもしれない。
頑張って勇気を出した人のことを馬鹿にしていたのかもしれない。
最初から勇気を出すことを諦めていたのかもしれない。
「かわいそうなのは、なにもしなかった私ってことか。」
その時思い出した彼からの言葉。
「小堀君は、私よりも勇気があるすごい人じゃん。」
自虐的に笑う私の脳裏に彼の笑顔がちらついた。
「私になんて、もったいないよ。」