Wonderful DaysⅢ【berry’s cafeバージョン】
「そういう大事なことは、もっと早く言いなさいよっ!」
文句を言い終わらないうちに、スマホを耳に当てたまま長い廊下を走り出した。
電話の向こう側で蓮がブツブツ言ってるけど、構ってる余裕なんてないから気にしない。
───あの子が、もしいるとすれば……
頭の中で思考して、私がまず最初に向かったのは自分のクラス。
三階までの階段を一気に駆け上がって、すぐ傍にある真っ白いドアへと手を伸ばす。
「マリア!?」
ドアが壊れるんじゃないかってくらい勢いよく開けたけど、真っ暗な教室にマリアの姿があるわけもなく。
シン、と静まり返った空間に、自分の声が空しく響くだけだった。
『いたか?』
「いない……」
方向音痴のマリアは、今でも迷子になることを恐れてあまり校内を歩き回らないから、てっきりここだと思ったのに。
私の考えは見当違いだったのかと、落胆の溜め息が漏れる。