氷と魔女《specialstory 完結》
春美は神級魔法を少ししか使えないけど、そのうちの1つにこの魔法があったから、1回使ってみた。

そしたらだいぶ落ち着いて、私も気が楽になった。

精神安定剤って聞くと変なイメージだけど、その時の私に使うのにはうってつけな魔法には変わりない。



「ねえ、春美。

ずっと聞きたかったことがあるんだけどさ」



春美は私の顔を覗き込んで、首を傾げて見せた。


そう、いつもいつも何と無く聞けなくて、3ヶ月経ってしまった。

春美といろいろあった時、思ったんだ。



「『さすが御垣家』……ーーー

そう、春美は言ったよね?
私には…いや。御垣という血筋には…
なにか秘密があるの?」


そう私が言った瞬間、春美から笑顔が消えた。

そして、すぐ切なそうな顔になる。

「ごめん、千草……

それは、言えないよ」


「なんで…」



なんで?


私たち、もう親友と言っていいほど仲良くなったんだよ?

4人との関係も上手くいってるけど、春美とも結構上手くいってると思ってた。



「違う!勘違いしないで!

……言えないんだよ、『掟』のせいで」


「『掟』……?」


春美は切ない顔を変えずに頷いた。

「私だって言いたいよ。
けどね、真実を口に出した瞬間…

私は、副大臣から裁きを受けて、死んでしまう」




副大臣から、裁きを……?

それって吟の…父親…?

「なんで⁉︎
なんでそこで副大臣が出てくるのよ…

もう、意味わかんない……」


涙は出なかったけど、悲しくて、苦しくて。

頭の中がぐるぐるして来て、吐き気がして来た。



『御垣』には秘密があるの?

その秘密を知る方法はないの?

もしかして、その秘密はお母さんとお父さんが殺された理由…?



「千草!

私からは言えない。ごめんね。

私の家は、血が繋がってる者同士なら裁きを受けないけど、他人に話すと…

けど、真実を知る方法がある…わかるでしょ?」



真実を知る方法……


「もしかして…

真実の書のこと?」


春美は無言で頷く。


真実の書を完成させないと、やっぱなんにもならないんだ…

全部全部、真実の書が関係してる。



「……千草。

『真実の書』は、やっぱ女神の羽がないと完成しないの?」


「うん。こっちに来てから1回も見てないけど、きっと白紙だよ」

「見てみない?」



春美の提案で、1度見てみることにした。



机の引き出し。私しか解けない魔法の引き出しの奥に、真実の書はあった。



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