空とマンホール
プロローグ
もしも、ずっとあった日常が、本当は誰かの手によって守られていたのだとしたら。
そんなことを考える機会はあまりない。
あまり無いから、忘れてしまうし、有り得ないと思ってしまう。
「先生、先週までこの棚に置いてあった絵の具どこやったんですか?」
美術部である顧問は端正な造りをした顔を上げて、「そっちの棚に移した」と言う。
「そういや、この前生徒会から来た部員募集ポスター描いた?」
「今から描く所ですけど…」
「締め切り明後日じゃなかった?」
え、と言葉に詰まって一緒に挟んであったプリントの期日を確認する。
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