空とマンホール

引っ張られるように振り向くと、模造紙の沢山入った箱を両手に抱えている結がいた。

美術部も文化祭準備が始まるらしい。

「どうしたの?」

顔が覗き込まれるまで近くに来る。俺はぼーっとそれを見ていた。

「それ、持つ」

美術室は通り道だから、と付け加えるけれど、通り道でなくとも持つつもりでいた。

「じゃあ半分持って」

そう言って、俺に半分の取ってを譲る。それを掴んで歩幅の合わない足でゆっくりと廊下を歩いた。

窓の外が明るくて、北側の校舎であるここは少し暗い。落ち着いた空気の流れるここは嫌いじゃないと、美術選択の俺はここに来る度そう思った。


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