空とマンホール
どうぞ、と自分の部屋のように紳士的な対応をされる。
言われた通り先に入って靴を脱ぐ。玄関の扉を閉めて、哲が後から来るのかと振り向けば違った。
扉によりかかって、何かを考えるように宙を見つめている。
バスケ部だってあったんだから疲れているんだろうな、と思うあたり、あたしの方が疲れている。
「何で家出た?」
廊下の灯りだけ点けた中、問われた。
「母さん、すげー心配してんだけど。うちの居心地が悪かったのかどーだこーだって」
「そういうのじゃない。ずっと、高校入ったら家は出るって決めてたから」
言ったのは急で申し訳ない。