空とマンホール
家を出るつもりで、この高校を選んだ。誰もあたしを知らないところ。哲もいない所。
入試当日にそれを知って、ちゃんと受かったあの日のあたしを褒めたい。
「…迷惑かけたなら、ごめん」
でも、全部返すから。
「迷惑とかじゃなくて、結がかけてんのは心配だろ。昨日いきなりとか、本当意味わかんね」
「…ごめん」
「謝るくらいなら帰って来いよ。こんな所に一人とか、」
携帯の着信音。
あたしのではなくて、哲の。
「また来る。鍵ちゃんと閉めろよ」
正直もう来なくて良いと思ったけれど、帰ってくれるならそれで良い。
哲が電話に出ながら扉から出て行く。相手は、あの女の子だろうか?