忘れた
「奈緒は俺がキスしたとき、ドキドキしたって言ってたよな。

それで、俺のことが好きだって気づいたって。

でもさ、それって、勘違いだったんじゃねえの?キスされたら、誰にだってドキドキするんじゃねえの?

奈緒は、俺のこと、本当に好きなの?」


淡々と言う勇介の表情は、とても冷ややかで。


あたしはどうしようもなく悲しみが込み上げてきた。


勇介とのキス。あたしの、ファーストキス。すごくドキドキした。これがキスなんだって思った。


そのとき、勇介との思い出で頭がいっぱいになったんだよ。


思い出っていっても、直接会ったのはたったの3回。あとは電話やメールだったよね。


電話で話してたとき、あんなに胸がときめいていたのに、何で気づかなかったんだろう。


きっと恋愛したことがなかったからだ。


でも今なら分かる。


好きなの。


勇介のことが、すごくすごく。

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