忘れた



昼休み。空き教室にて。


「えーーーッ」


4人の女子たちの、悲鳴ともとれる叫び声が廊下に木霊した。


「キス? あの、おチャラけた早水が?」


みんな、あり得ない、と顔に書いてある。


「そう。体育祭の日に」


「なにそれ、結構前じゃん。何で早く教えてくれなかったの?」


とふくれっ面の梨沙。


「ご、ごめん。次の日の早水があまりにも普通だったから。

あとほら、松原さんとかにバレたくなかったから」


松原さんというのは、早水のことが好きだという噂の、クラスメイトだ。


「ちょっと、あたしたちは口堅いよ?」


と怒ったように言う舞花。


「そうだよ。だから、これからは何でも話してね」


と麗。


「ごめんね、みんな。そうする」


と、あたしは心を込めて謝った。

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