忘れた
「あたしは、勇介に無理してほしくないと思っただけなのに」


ボソボソいうあたしに、梨沙が追い打ちをかける。


「無理してるかしてないかを決めるのは、奈緒じゃなくて勇介さんでしょ」


確かに、そうだ。


「心配するのもいいけど、もうちょっと勇介さんに甘えてもいいんじゃない?」


と梨沙。


「そうだよ。あたしだって、毎日先輩に会いたいもん」


と麗。舞花と里美も、ウンウンと頷く。


「分かった。みんなありがとう」


あたしは、心のモヤモヤが少しだけ晴れたような気がした。


「電話、したら? ずっとしてないんでしょ」


と里美。


「い、今?」


「今じゃなくて、いつするの。はい、携帯出して」


渋々あたしは携帯を取り出し、画面に勇介の電話番号を表示させる。


が、指が言うことを聞かない。


「お、押せないよ」


すると里美があたしの手から携帯を取り上げ、勝手にタップしてしまった。

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