忘れた
立っていたのは、背の高い男の人だった。身長175cmのあたしより全然高い。


ストライプ柄のVネックTシャツに、黒のロングパンツ。とてもシンプルな格好だ。


クルクルパーマの明るい茶髪は、栗色の目によく合っていた。


この目、どこかで見たような…


それにしても、この人…すごくかっこいい。目鼻立ちがハッキリしてて、眉毛が濃くって、何だか外国人みたい。


「久しぶり」


ん?


「自転車届けに来たよ。奈緒、全然取りに来ないからさー」


妙に馴れ馴れしく話す彼の傍らには、見慣れたシルバーの自転車が…


「あーッ、あの時の!」


あたしは思い出した。あの時、あたしを救ってくれた人だ。こんなにイケメンだったなんて。あの時は暗くて、顔がしっかり見えなかった。


「ごめんなさい。自転車のことすっかり忘れてました」


「ついでに俺のことも忘れてただろ」


彼はあたしを睨みつけて、クスッと笑った。

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