忘れた
20分後。


勇介のアパートはこの前と全く変わりなくそこにあった。


勇介の部屋の前に来ると、鼓動が速くなるのを感じた。


緊張気味にチャイムを鳴らす。


するとすぐにドアが開き、微笑を浮かべた勇介が現れた。前と同じ、上下黒のスウェットで。


会いたかった。


愛しい愛しい、勇介が目の前にいる。


あたしは何も言わず、そっと勇介を抱きしめた。


前と変わらない、少しゴツゴツした逞しい体。だが、とても温かい。


1週間前に勇介が会いに来てくれたときは、突然すぎて喜びより心配の方が大きかった。


だけど、今はただただ嬉しさでいっぱいだ。


「奈緒…」


勇介の腕が、あたしを包み込むのを感じた。


しばらく抱き合うあたしたち。


「とりあえず、中に入ろう」


勇介のその言葉で、あたしは惜しむように勇介から離れた。

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