忘れた
触れるだけのキスだけど、あたしからはそれが精一杯。


期待を込めて待っていると、勇介の唇が開いた。


ああ、このキスだ。ハムハムするやつ。


あたしは目を閉じた。


勇介の唇の動きに合わせて、あたしも必死で動かした。


キスの仕方なんて、よく分からないけど。


勇介にガッカリされたくない、その一心だった。


あたしの頬が、大きな温もりにすっぽりと包まれる。


勇介の手だ。とっても温かい。


混ざり合う吐息と断続的なリップ音が、狭い洋室を支配していた。


身体中の力が抜ける。だんだん押されて、背中に柔らかな衝撃を感じた。


勇介の唇がグッと沈み込む。


「好き…」


キスの合間に、気持ちを伝えた。


「俺も…」


勇介が答えてくれて、すごく嬉しかった。


このまま、勇介と1つになりたい…


そんな思いが頭をよぎる。

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