忘れた
「あたし、勇介がどんな仕事してるかも知らないんだよ? そろそろ教えてほしい。

いつも、そうやってはぐらかして。

あたしに隠し事しないで」


奈緒の目は俺を捉えて離さない。俺は目を逸らすことが出来なかった。


「昼間はパン屋とコンビニを掛け持ちしてる。夜は工事現場」


奈緒は目を見開いた。


「何でフリーターなんかしてるかっていうと、親に勘当されたから。

理由は、俺が大学を中退したから」


奈緒は驚いているようだった。俺が自分の話をするのは初めてだから。


でも、驚くのはまだ早い。本当はこの話はしたくない。だけど奈緒に隠し事はしたくなかった。


「俺には姉ちゃんがいる」


「え? でも前はひとりっ子だって…」


「俺が高3のとき、首吊って死んだ」

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