忘れた



上下真っ白なコックコートに、赤のスカーフ、長いコック帽。


これが、パン屋での、俺のスタイルだ。


更衣室を出ると、先輩の北原さんが外で待っていた。この更衣室は狭いので、1人ずつしか入れないのだ。


「おっはよう、勇介くん。今日もカッコいいねえ」


「ありがとうございます」


なんて、恒例の会話を交わす俺たち。


北原さんは、中学生の子持ちのおばちゃんだ。豪快に笑う彼女のことが、俺は結構気に入っていた。


厨房に入ると、店長とパートのおばちゃんたちが何人か、すでに来ていた。


俺はこの中では1番の下っ端だ。


「おはようございます」


という俺の挨拶に、みんな笑顔で答えてくれる。


フレンドリーな職場だと思う。


俺の担当はホール。『キッチンベーカリー まつおか』では、パンの他に料理も提供する。


そのため、机や椅子が並んだ食事スペースが広くとられている。

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